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朝まで生テレビ「激論!ド~なる?!裁判員制度~あなたは人を裁けますか~」を見た――或いは近代と戦争 [その他]

関心が向いたところを議論の時間軸を無視して、ピックアップしてみます。

いつも思うんだけど、番組が始まって、パネリストが一人ひとり紹介されて席に着くところをやってから、ちょっと田原総一朗、渡辺アナ、長野智子で三人でしゃべってからCMにいって、CMあけにまた、あたかも今番組が始まったかのように渡辺アナと長野智子が導入的な話を始めるっていうのは、何なのかね。こちらとしては「いや、その話は聞いたって」みたいな。地方の放送局とかだと、パネリストがスタジオをウォークするとこを放送しないのかな?

◇基本的な議論の枠組み
裁判員制度について、賛成・推進の立場(田原の左手)と反対・慎重の立場(田原の右手)に分かれて(姜は田原のトイメン)の議論。
現行の制度の悪いところが、裁判員制度を導入することによってよくなると考える賛成派。
裁判員制度にはさまざまな問題(アマはメディアに流されやすいとか、量刑(死刑含む)まで決めるのは負担が大きいとか)があり、かえって今より悪くなると考えている反対派。

◇死刑制度についてどう考えるか会場(の女子)から質問
(渡辺アナは「どなたに聞きますか?」と言って、女子が「じゃあ森達也さんに」と言ったが、田原が「小林さん、小林さんどうぞ」と言って女子&会場笑い。)

小林節慶應義塾大学教授 「私は死刑は存続です。いまだに死刑が一種の予防効果と応報効果があると思っているんですね、私の学習成果では。それで、その中で裁判員に死刑の判断をさせるとなると、今のIT時代は裁判官ですらメディアの影響を受けているという報告があるくらいですから、その点、ドシロウトの裁判員の方がよりいっそう普通の感情を持ち込みやすい。ましてや被害者が裁判参加しますから、ますます復讐心というのが膨らんでくるので、極めてこれは運用上むずかしい制度になるんじゃないかと思います」

森達也、伊藤和子は死刑廃止論

姜尚中東大大学院教授 「あのちょっと小林先生と反対かもしれないんですが、死刑が犯罪、特に殺人に対して抑止効果を持つというデータはですね、普遍的もしくは一般的にはそう言えないんじゃないですか? (小林うなずく) そしてなおかつ、基本的には応報刑というか、要するに「目には目を歯に歯を」で、そこでジャスティス正義が確保されているという、そういう国民感情はわかります。僕自身は死刑廃止でもないんですね、今は。ただね、問題は、その抽象的に廃止か存置かっていうことよりは、実際に死刑がどうゆうに執行されてんのか、これはほとんど知らないと思うんですね。それは完全なブラックボックスに入ってるから、実際どういう方がどんな風にして、例えば、あのーまあ、ハンギングにしてもですね、結局実際に絶命するまで時間がかかると、そうすると刑務官が、最後までそれを、ぶれないようにね。そういうような具体的な死刑の執行過程について、やっぱりもうすこし明らかにしないと、だから僕は法務大臣が死刑に、これは法律で決まっているんだからやるんだというならば、彼はちゃんと検分すべきだと思うんです。検分して死刑というのは実際に具体的にどういうプロセスでやられているのか――(丸山が口を挟む)――だから僕も死刑廃止か存置かはあまり言えなくて、でも問題は死刑の実際的なプロセスについて、もう少し知らないと、みんなが(田原「公開処刑がいいってこと?」)公開じゃなくてですね、公開でなくてもあまりにも知らされてないわけですよね、どこの(丸山「いまは発表するようにしてますよ、鳩山法務大臣になってから」)それであっても、ほとんどの人にとってはアクセスできないでしょう、具体的に例えば建物の構造とか、そういうことについては森さんが少し書いてるけども、かなり秘密性というのが守られている。(渡辺アナ「田原さんもうすこし意見聞いていいですか」)」

姜さんはどっちつかずと。

公開処刑いいじゃないか、NHKで生中継してくれよ。2ちゃんの実況でみんなで「キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!」とかやりたい。
っていうか建物の構造とかそんなに知りたいか? どうでもよくね? それが存続か廃止かの議論になにか影響を与えるんだろうか。死刑というものに、仮に残虐な死刑と人道的な死刑の二つがあったとして、存続派も廃止派も、そこになんらかの差異を認めるんだろうか。
「存続派が残虐な死刑を望み、廃止派が死刑廃止を望んでいるから、間を取って人道的な死刑に落としどころを見つける」なんていうケースはあるだろうか。ないだろう。

◇裁判員制度導入の是非
小林教授 「弁護士の先生方がいろいろいまの刑事司法の問題点をご指摘になったのは、案外誰でも共有できると思うんですね。ただ解決方法としてそれでいいのかなという疑問から青臭い憲法論をさせていただきますけれども、憲法は31条と32条と37条1項で、国民に対して犯罪者と疑われたら公正な裁判を経ないで処罰されませんよと保障してるわけですよね。わたくし自身も関わってみてよくわかるんですけれども、刑事司法ってやっぱりプロフェッショナルな世界だとわたくしは思うんですよ。先生方がおっしゃったような問題点は、プロの配置を換えるとか、プロの訓練をするとか、プロのコウホウ(?)の仕方を変えるとかいうことで改善できるはずなんですね。例えば検事と判事の人事交流をやめるとか、裁判官をデパートに出してみるとかですね、それをせずに突然ドシロウト入れてですね、「素人の良識が」なんてこと、わたくしはぞっとするんですよ。つまり憲法で保障さてれいる公正な裁判が保障されないんじゃないですかという心配がひとつ。
それから、司法の民主統制みたいな、司法に国民主権者が参加するというような議論、これはとても不思議な話で、我々は国会と内閣というのは選挙による、あるいは感情による多数決によるプロセスとして国民が直に手を突っ込むんですけども、逆に司法というのは、国民全体が興奮して「アイツやっちまえ!」と言っても、「いやでもそれはね人権(ry」 この一人を守りますという超然たる独立した司法をつくっているはず、憲法上。だから裁判官には身分の保障もあるし、裁判官の任命というのは憲法上規定されているんですね。裁判“員”と呼ぶから裁判官じゃないというのは嘘で、裁判員というドシロウトを裁判官とほぼ同じ資格を持って裁判に有権的に関わらせる以上ですね、憲法に書かれている裁判官の選任手続き逸脱どうなるんですかという疑問があるんです。
そしてさらに周辺の知識ですけども、よく外国の制度を引用されますけれども、例えばイギリス系の、つまりアメリカもカナダもですね、陪審制というのはたまたま1千年もむかしの、ヨーロッパのノルマンがケルトのイギリスを支配した時から始まった、移住民族構造で、支配者が現場の事情がわからないから、長老を呼び出して「何があったの?」、から始まってる陪審制度で、1千年も実績があるから彼らは使いこなせるんです。わたくしアメリカ留学中にわざわざいろいろ傍聴してみましたけれども、やっぱりね、あれは危険なんですよね。美しい女性が泣いたりするとやっぱりそっちへいくんですよね。アメリカでも陪審制どうしようかって議論が正当にあるわけで、フランスなんかだって我々と民主主義の原理が違って、直に国民が権力を捕まえて、つまり「直接民主制型の原理が民主主義だ!」って国、全然憲法原理が違うんですよね。そういうものを背景とか経験を抜きにね、とてもいい選択肢のように並べている議論はわたくしは極めて危険だと思います」

小林教授のいうことには説得力がある。

刑事司法の問題点、つまり冤罪の温床である警察の自白強要、検察と裁判官の癒着といった問題が、裁判員制度によって解決できると信じているのが賛成派である。そして、冤罪も犯人を見逃してしまうことも、裁判員制度でむしろ増えてしまうと思っているのが反対派。この認識の違い。
刑事司法の問題点の解決は、裁判員制度の導入によってのみ可能であるという賛成派の意見はどうも納得いかない。

姜 「法律や制度で明示化されているものと、例えば裁判官と検察との癒着、癒着という表現はまずいということでしたから、ある種の馴れ合いですね、そういう制度化されていない部分で運用上、慣行だったり、あるいはなかなかそれが我々には知りえないようなインサイダーだけのですね、まあひとつのやり方というか、いま我々が議論していて、明示的な制度や法律を変えるというよりは、むしろ運用されている明示化されていないもの、インサイダーだけのひとつの癒着関係とか、まずこれをはっきりと明らかにして、それを改革してゆくというか、どうも高井さんの話を聞いているとやや属人的に議論をされているような気がするんです。「こういう人がいる、ああいう人がいる」という。そうではなくてやっぱりシステムが問題なわけだから、システムが問題にしているときにね、属人的な原理でいろいろ話をしても、やっぱり僕はまた同じことの繰り返しになると思う」

法律を変えて裁判員制度導入する前に、明示化されていない慣行・システムを改革しろと。
そのとおりだ。
しかし賛成派が言うには、いままで何十年も改善を求めてきたが、いっこうによくならない。だから裁判員制度しかないんだという。

姜 「蓋然性の問題で、(裁判員制度を導入すれば)必ずよくなるというその保障はどこにもない」 「……何かに特化して(裁判員制度の対象は殺人などの刑事事件だけ)、一点突破で全部全面展開というその理由がね、ないんですよやっぱり」

高井康行弁護士 「刑事司法というのは捜査と裁判両方でできているわけですね。捜査が下部構造、裁判が上部構造、入り口と出口と言ってもいいんですけれども。どちらから先に変えていくか。先程来、福島さんは下部構造から変えろと何度も何度も主張しているわけですけれども、それは政策のあり方、制度としては、上部構造から変えていく、それによって下部構造が変わるのを待つ、という政策判断もありうるわけですね。そういう意味ではこれは政策判断の問題であって、どちらがいいということは言えないんじゃないかと。ただ国会で裁判員裁判をやると決めたわけですから、すこしでもよりよい制度になるように努力するというのが我々の立場だと思います」

姜 「入り口が問題だと、やっぱり出口からは誤ったものが出てきますよね。やっぱり最終的には入り口をどうするかということをきちっと考えないといけないんじゃないかと思います」

◇文明国、先進国であるための裁判員制度?
森達也 「そもそも裁判員制度が始まった理由というのは財界の意向ですね。98年99年ぐらいに経団連、経済同友会が民事のほうの司法改革をもくろんで審議会つくりましたよね。それがまあ、いつの間にか刑事司法のほうにに移ってきたと、そういうふうに聞いてますけれど、そのへん違いますか?」
小池振一郎弁護士 「財界っていうのは結構海外知ってますから、ヨーロッパ・アメリカどうなっているか。7月からサミットが北海道で開かれますが、G8の先進8か国のなかで国民の司法参加の無い国は日本だけなんですよ。それは財界にとっても恥ずかしいことだと思いますね。やはり世界で日本がそれなりに並んで、欧米諸国と同じように先進国と言われるためにはですね、あるいは常任理事国に入るためには日本もちゃんと一人前の国にならないといけないと、そういう思いもあったんだろうと思いますよ」

姜 「小池さんの話を聞いてたら鹿鳴館の時代をちょっと思い出したんですねw つまり先進国並みに我国をするためにはですね、いろんなことをしなければいけないとw まさしくこのグローバル化の中で第二の鹿鳴館時代の――(田原がなんかいう)――裁判領袖制度かな(領事裁判権のこと?)、それから関税自主権(に関する不平等)を取っ払うっていうのはね、いわばいってみれば日本が常任安保理事国になると、僕は常任安保理事国になるってこと自体には決して反対ではないんですが、なにかその国のステータスのためにね、こういうことをやらなきゃいけないというのは、ちょっと一般の庶民感覚からかなり――(田原がしゃべり始める)」

小林節 「さっきわたくしも申し上げたように外国との比較は簡単に言ってしまえばずいぶん愚かな話だなぁと思って、それぞれ背景が違うものですから、国情が違いますから、そんなもの僕らがコンプレックス持ってもしょうがないことだと思うんですよ」

小林先生のおっしゃるとおりです。

姜さんは第二の鹿鳴館だと言っていたけど、鹿鳴館と言うよりも、こういう欧米の、つまり白人のまねをすることが正しくて、それが進歩だというような考えというのは、鹿鳴館に限らず、明治、大正、昭和戦前・戦後、現在において一貫して日本を支配してきた考え方である。
これを保田與重郎は「文明開化の論理」と呼んで批判し、日本人は、日本の歴史、伝統に基づく文明、文化を世界に及ぼして、そういう西洋の近代的な価値観を覆すべきだと考えた。戦前は「西洋の没落」と「近代の超克」の問題が知識階級によって議論されたわけだ。(保田は超克ではなく終焉と書いたが)しかし戦争に敗れ、再び文明開化の時代となった。それが今日まで続いている。
死刑制度廃止、捕鯨禁止、禁煙(これに関して僕は賛成だけど)、共和制などなど、日本を欧米のようにするんだ、人類の進歩なんだという声は途切れることなく聞こえてくる。
テレビをつければいつも「アメリカでは~」「フランスでは~」「スウェーデンでは~」。
日本は日本だろ!

話を朝生に戻そう。その他気になった点。

田原さんが耳にイヤホンみたいなのをつけていたがアレは何だったのか。
田原さんは彼以外の人はちゃんと聞こえていると思われる誰かの発言も聞き返すことが多い。
そのため議論の進行が滞ることがある。
イヤホンはそれに関係しているのか。スタッフからの伝達はカンペでCMにいくとかやってるみたいだし。

社会民主党党首の福島瑞穂。
「(そんなに裁判員制度が問題だというなら)なんで国会で賛成したの?」
福島「んー」
「なんで裁判員制度の対象に汚職とかを入れなかったの?」
福島「・・・」
┐(´ー`)┌




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つぶせ!裁判員制度 (新潮新書)
裁判員制度はいらない
殺人犯を裁けますか?―裁判員制度の問題点

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